ERGO DESIGN 日本人間工学会アーゴデザイン部会

三方よしのビジョン提案型デザイン手法の実践
~ユニバーサルデザイン4.0~

2017年度 テーマ

アーゴデザイン部会

マザーロードマップWG活動報告

2013年3年3日着手
2013年3年9日Tips、提言を追加
2013年3月28日第1稿
マザーロードマップ活動報告
TheMotherRoadMap
新家敦*
株式会社島津ビジネスシステムズ
SHINYAAtsushi
ShimadzuBusinessSystemsCorporation

1.概要

アーゴデザイン部会マザーロードマップワーキンググループは、2008年8月の「ロードマップWG設立趣旨説明会」より活動を開始した。

現在までに、以下の発表を行ってきた。
・2009年度コンセプト事例発表会
活動報告:アカデミックロードマップWG
・2009年度関西支部大会
製品・サービスを目的としたロードマップ
・2010年度関西支部大会
5年先のペルソナを考える

-マザーキューブによるロードマップ作成手法の検討-
今回は、これまでの活動のまとめと今後の展開について検討する。

2.ロードマップWG設立経緯

2008年春、神奈川大学堀野先生より、経済産業省がロードマップ作りに力を入れており、今後、経済産業省は限られたリソースについて、ロードマップを作成する学会に優先的に割り振るらしいとの話。
ついてはアーゴデザイン部会でもロードマップの検討を始めたいとの話があった。
当時の他学会の動向としては、日本機械学会が2007年にロードマップを作成し、公表しているのが有名であった。また、産業技術総合研究所もロードマップを開示していた。
これを受けて、アーゴデザイン部会幹事7名により「アカデミックロードマップワーキンググループ」を設立、活動を開始した。

3.視点・着目点

本WG の視点や着目点について、どこに据えるかを検討した。
時期を同じくして、日本人間工学会本体でもロードマップを作成、発表の動きがあった。学会本体のロードマップの内容は、いわゆるアカデミックロードマップそのものである。
アーゴデザイン部会としてのロードマップ研究について、これと競合しない立ち位置・視点が求められると思われた。
そこで研究の視点をロードマップの新しいあり方に移すこととした。
また、アーゴデザイン部会がこれまで研究してきたペルソナ・シナリオ・人間中心設計などの観点を強みとして取り入れていくことにした。

4.人間中心設計の観点から見たロードマップ

ロードマップ作りを人間中心設計の観点から捉え直すと非常に興味ある問題が明らかとなってきた。
企業により作成されている技術・製品ロードマップを見ると、軸は二次元であり、X 軸が時間軸、Y軸が技術の進化度合いなどとなっている。
そして、時間軸が進むにつれ、技術は人間にとってより便利に、豊かな生活を提供する方向に進んでいることが分かるのである。
しかしながら、それぞれの技術の進展に合わせた生活シーンの提供は、人間側から見れば時間軸が統制されていないのである。
これは技術が主、人間が従の関係であり、技術の進展の都合により人間の生活が制約を受けている状態である。
本来であれば、複数の技術・製品のロードマップ群は、主軸である人間側の時間軸に制約されるべきであろう。
まず、人間の確たる時間軸を設定する必要がある。
このためには、一人のペルソナを作成し、10年後、20年後などのマイルストーンごとにそのペルソナの変化する内容、もしくは変化しない内容を並べていくのが正しいと思われる。
すなわち、先にペルソナの時間的変化をロードマップとして配置し、10年後、20年後のペルソナに対する製品戦略を検討していくというロードマップの作成スタイルが、より正確なロードマップを生むと考えられるのである。
また、このように人間中心のロードマップであれば、複数の技術・製品のロードマップの時間遷移を破綻なく統制できるのである。
このように人間中心設計の観点を取り入れたロードマップ作成スタイルを、「マザーロードマップ」方式と呼称することにする。

5.マザーロードマップの提案

マザーロードマップでは、ペルソナ手法を用い、現在、10年後、20年後のペルソナを作成し、これを時間軸に置く。
メーカーは、そのペルソナのための製品を開発・提供するための技術ロードマップを作成する。このようにすれば、より破綻の少ない製品・技術ロードマップを作成することができる。
さらに、確固たる人間軸があることで、複数の技術ロードマップを比較することが容易となり、将来の製品に求められる技術の開発要素に対して、社内のリソースを適切に割り振ることが可能となる。
これまで、それぞれの技術ロードマップの比較だけでは得られなかった、納得性のあるロードマップが描けるものと思われる。

6.今後の展開

マザーロードマップWGでは、このロードマップの表現方法についても検討した。これまでの二次元平面で描かれるロードマップでは軸が不足するとして、多次元のロードマップの表現手法などがその例である。
ただし、この完成にはまだ多くの検討の余地を残すため、ここまでで本ワーキンググループの区切りとし、後進に実現を託すこととする。

参考文献

1) アーゴデザイン部会担当幹事: ロードマップWG 設立趣旨説明会, 2008 年度コンセプト事例発表会予稿集, (2008).
2) 新家敦: アカデミックロードマップWG の活動報告 1.これまでの活動と今後の方針, 2009年度コンセプト事例発表会予稿集, (2009).
3) 新家敦, 高橋靖, 上田義弘, 細田彰一, 吉井誠, 堀野定雄: 「製品・サービス開発を目的としたロードマップ」, 2009 年度関西支部大会シンポジウム, (2009).
4) 上田義弘, 柳田宏治, 山崎和彦, 新家敦: アーゴデザイン研究の発展経緯と展望, 人間工学, Vol 46, No.2,p.87 ? 94, (2009).
(初出:コンセプト事例発表会2012, 2012/09/12, 首都大学東京 サテライトキャンパス)

◆提言

1) 人間工学の専門家は、企業・組織が検討する技術・製品ロードマップのベースとなる、人間の時系列を表したロードマップ、「マザーロードマップ」を作成し、それに修正を加えながら改定し続けることが必要である。 「マザーロードマップ」は、複数のペルソナを用い、それぞれのペルソナの現在・10年後・20年後などを描くデータベースである。
企業は、この人間の成長軸をベースとし、技術・製品ロードマップを設定することで、自社の複数の技術・製品ロードマップ間の整合性が取れるようになる。

2) 人間工学の専門家は、もの作りの基盤となるマザーロードマップの提供を通じて、社会全体を下支えする役割を担うべきである。

◆Tips

1) 時系列に沿ったペルソナの開発

ペルソナに時間の概念を取り入れ、ロードマップに対応させる。
ペルソナに内包するパラメータについて、不変なものと、時間と共に変化するものに分けて考える。
また、年齢のように時間とともに確実に変わるパラメータを把握しておく。
担当幹事:吉井

2) ユーザの単位

個人、家族、集団などが考えられる。

3) 細分化

長期ロードマップの実行については、通常、それに内包されるイベントベースのマイルストーンが設定される。
このマイルストーンを細部化していくことで、「ロードマップ実現のために今やること」が認識できるようになる。

4) 高齢者の統計情報

これまでの統計情報では、年齢別の刻みが10歳ごとであっても、60歳以上は「60歳以上」としてひと括りにされたものが多かった。高齢社会では、60歳と70歳、80歳ではペルソナが大きく変わると予測される。このため、統計情報も少なくとも80代までは10歳刻みにすべきである。

5) ユーザとアーゴデザイン

ユーザとアーゴデザインの関わりは、時代とともに、距離的・時間的に広くなっていく傾向にある。
80年代はハードウエア的なインタフェースの研究であり、人間と機器は数センチメールの間が検討課題であった。また時間的にも即時的であった。
現在では、数メートル先のセンサーからの情報をインタフェースの要素に加えたり、数時間・数日後に結果をユーザにフィードバックするような業務システムのユーザインタフェースを検討するようになってきている。

6) 多次元を表現できるロードマップ手法「マザーキューブ」

担当幹事:細田