| ■2010年11月5日開催 日本人間工学会アーゴデザイン部会見学会 主催:日本人間工学会アーゴデザイン部会 |
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![]() 日本人間工学会アーゴデザイン部会見学会会場の日本航空安全啓発センター 日時:2010年11月5日(金)15:00〜16:30 場所:日本航空安全啓発センター 東京モノレール「整備場」駅下車徒歩5分 東京都大田区羽田空港1−7−1第二綜合ビル内 2010年11月5日,アーゴデザイン部会の会員15名(部会長の上田氏を含む)で日本航空安全啓発センター(以下,本センターと略記)を訪問しました.本センターは,東京モノレール「整備場」駅で下車して徒歩5分の場所にある空港施設(株)第2綜合ビルの2階フロアの一部として設けられています. 当日受け取ったパンフレットによると,本センターはJALグループの研修施設として2006年に設置されました.123便の事故の教訓を風化させず,安全運航の重要性を社員で再確認するために使われているそうです. 123便の事故とは,1985年の「御巣鷹山への航空機墜落事故」として一般には認知されています.「御巣鷹山」というキーワードがよく使われていますが,墜落した場所は,正式には名前がない尾根だったそうです.本センターでは,墜落した航空機の名称(日本航空123便JA8119号機)を使って「123便事故」と説明されていました. 1985年当時の報道が非常に大きかったことは記憶していますが,事故に至る具体的経緯や事故原因の調査結果,その後の取り組み等について,それほど多くを知っている訳ではありませんでした.したがって,これらについて新たな情報を得ることを自身のテーマとして参加しました.また,アーゴデザイン部会の会員としては,事故後の取り組み(コミュニケーションやサービスのデザイン),本センター展示物の情報デザインについても興味がありました. 123便の事故については,たくさんの資料が公表されていますので興味がある方はそちらをご覧ください.例えばWikipediaにも情報が集約されています:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%88%AA%E7%A9%BA123%E4%BE%BF%E5%A2%9C%E8%90%BD%E4%BA%8B%E6%95%85 以下では,本センター展示物の情報デザインについて感じたことを説明します. 本センター入口から入ると右手に資料室があり,左手に展示室が広がっています.最初に案内された資料室では,代表的な航空機事故がパネルにして展示してありました.また,奥の壁面は本棚になっており,事故調査報告書が収めてありました.ここには,人間工学に関する著書も含めて,航空機事故に関する代表的な図書があり希望者には閲覧できるようになっていました. 情報デザインという観点からは,ビューアのフローをよく考えて設計いると感じました.まず,センターに入ってすぐの資料室で,過去の事実や知識などに基づいていることを印象付け,123便の事故について調査結果に基づいて事実とされているデータを離陸から墜落まで時系列に沿って説明します.次に,事故の原因になったと考えられている現象の説明を損傷個所のパネルや残存部品で説明します.そして事故の原因となった後部圧力隔壁の損壊について,それが生じた理由だと報告されている対象を説明します.一連の事故に関する説明の最後に,事故後の対策について,安全に対する十分な対策を取り組んでいることを印象付けます. 特に,フライトレコーダーに記録されている各種のセンサデータが時系列に一覧視できるようになっている点と,123便が辿った航路の地図表現は,全体の時間点・地理的経緯を理解しやすく作成されていました.また,垂直尾翼の実物を見ることによって,その大きさを実感することができました. さて,基本的にここまでは,123便にかかわっている人(具体的には,乗客・乗員)に関する説明はありません.例外はボイスレコーダの記録と管制官との通信に関する部分ですが,これらも事実として,つまり記録されたデータとして説明されているだけにすぎません. センターの展示物でもっとも力強い対象は,この奥にあります. 最後に説明されるのは,乗客の遺品と遺書,そして事故機の座席です.墜落時間に止まってしまった複数の腕時計や曲がっている鍵などによって,事故に多くの人々がかかわっていることを認識させます.事故原因となる異常事態の発生から墜落までの約32分間の間に書かれた遺書によって,亡くなったのは乗客・乗員といった抽象的な存在ではなく生身の個人であり,その一人ひとりが恐怖を感じたり,家族を思ったり,無念さを感じたりしていることを実感します. 遺書と並んで展示されているのは,乗員の一人が用意していたメモでした.不時着を想定して,その後に乗客を誘導するためにアナウンスする内容が,日本語と英語で書かれています.ジェットコースターのように揺れる機内で,恐らく自身でも恐怖を感じていたと想像しますが,その中で準備されたと思われるメモには非常に高い職業意識を感じます. 展示スペースの一番奥には,乗客の座席が展示されています.原形をとどめない壊れ方をしているものもあり,事故での衝撃がいかに大きかったのかが目に見えて分かります.社員研修では「この一つひとつにお客様がいて,同じような体勢を強いられたはずだ」と伝えるそうです. この段階で,高い職業意識をもって安全への取り組むというメッセージが強く印象付けられました.私自身,アーゴデザイン部会の見学会として来ていなければ,おそらく遺書の展示の前で泣いていたと思います. 座席の説明を受けて,説明フローは終了となります.実はもうひとつ,ここには重要な展示があります.座席の説明を受けて振り返ると,事故の遺族の会が作成したニュースレターが展示されています.このニュースレターを見ることによって,事故は終わった一つのイベントではなく,この事故で家族を失った遺族がいること,そして遺族にとってこの事故は,1985年以降もずっと続くのだということを再認識させます. 以上,全体として123便事故の教訓をもとに,安全への認識を強くするという意味では,とても効果的に作られた施設だと感じました.私たちが生み出す製品やシステム,サービスには,それにかかわる人がいること,安心・安全への取り組みを重視すること,高い意識をもって働くこと.たくさんの思いをもって見学会を終了しました. 筆:山梨大学 郷 健太郎 |
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